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NewsDX 第27号

2006年03月01日作成 

 

XML関連標準化ニュース

奥井康弘

XMLは、もともと個別の地域や特定の団体・組織に捉われない汎用的なデータ交換標準形式であることから、必然的にXMLの業界標準規格は、グローバルな組織で作成されることが多い。たとえば、コアな規格はW3C、応用規格はOASIS、各業界の規格は、業界を取りまとめる国際的組織が行っている。このような規格が国際組織で制定された後、各国の運用に供される際、それぞれの国での標準規格としてのお墨付きがあるならば、それはその国での業界XML標準規格の進展を促進するものとなる。
昨年7月に2つのXML業界標準規格がJIS(日本工業規格)として承認された。JIS化されることによって、それらの規格は国内での標準規格としての地位を確立することになる。以下にその2つの規格を紹介する。これら2つのJIS化によって、XML業界標準がより日本で運用されやすくなると考えられる。今後の発展に期待したい。

財務関連規格:XBRL

2005年7月:JIS X7206 「拡張可能な事業報告言語 Extensible Business Reporting Language (XBRL) 2.1」としてJIS化。
これは、各種財務報告用の情報を作成・流通・利用できるように標準化したXMLベースの言語であり、1998年に米国公認会計士協会で検討が始まり、2000年にXBRL1.0としてXBRL Internationalによって規格化されたものである。XBRL Internationalでは、2003年12月31日にXBRL2.1を勧告として公開したが、JISはこのXBRL2.1の翻訳版である。
XBRLについては、すでに弊誌でも何度か取り上げられているが、各国の異なる金融事業にカストマイズできる仕組みがあらかじめ用意されている(これを「タクソノミー」と呼ぶ)。このため、各国にはXBRLの各国対応団体があり、日本でもXBRL Japan(http://www.xbrl-jp.org/)が約80組織を擁する団体として活動している。各国の金融事情に依存しない共通のフレームワーク部分が今回JIS化されたものであり、各国の金融事情に合わせ、様々な財務情報のタイプごとに定義されるべき「タクソノミー」については、別途定義する必要がある。XBRL Japanでは、「税務用財務諸表タクソノミー」が定義されている。
XBRLの適用については、たとえば金融庁が、2005年6月29日に公開した「有価証券報告書等に関する業務の業務・システム見直し方針」でXBRL導入の意向を明確にしている(http://www.fsa.go.jp/common/about/gj-suisin/f-20050816-1/04.pdf)。
また、東京証券取引所も、2003年5月より稼動した「適時開示情報伝達システム(TDnet)」において、決算短信1枚目データ、業績予想・配当予想の修正情報をXBRL化している。(http://www.tse.or.jp/disclosure/index.html)

ニュースコンテンツ配信規格:NewsML

2005年7月:JISX7201 「ニュース用マーク付け言語 (NewsML)」としてJIS化。
これも弊誌で取り上げたことがあるが、ニュース情報配信のためのデータ交換用共通フォーマットとしてXMLを採用した規格である。NewsMLはNews Markup Languageの略称である。
ニュースソースやコンテンツの多様化に伴い、ニュース素材のデータ配信の汎用性のある共通な仕組みが必要となり、統一フォーマットとして2000年に国際新聞電気通信評議会(IPTC)(http://www.iptc.org/)によってNewsML1.0が定められた。その後、IPTCでは、2003年10月にNewsML1.2を公開しており、今回のJIS化されたのはこのNewsML1.2を翻訳したものである。いわゆる翻訳JISとなっている。
このNewsMLは、ロイター、共同通信、毎日新聞など新聞各社がすでに使用しており、新幹線の電光掲示板などでも用いられている。日本でのNewsML規格の検討は日本新聞協会(http://www.pressnet.or.jp/)が行っており、今回のJIS化においても原案は日本新聞協会が作成した。

 

ニュース-OASIS編

中山 幹敏

2005年11月30日:共通警報プロトコル(CAP)v1.1がOASIS標準として承認される

OASISは、共通警報プロトコル(Common Alerting Protocol, CAP)のバージョン1.1をOASIS標準として批准し、正式決定した。
共通警報プロトコル(CAP)とは、嵐や落雷、地震など、緊急事態に関する情報を通知したり交換したりするための汎用的なデータ形式である。CAP V1.1では、緯度と経度による位置情報の指定、三次元による地球空間の位置指定、複数言語のメッセージ対応、メッセージの更新と取消機能の拡張、電子暗号化と電子署名への対応、電子画像や音声機能の追加などが機能拡張された。
CAPはXMLで記述されるメッセージである。基本構造はリスト1のとおりであり、比較的シンプルな構造をしている。
緊急事態に対応するため、危険な事象を記述するデータ形式を国際的に標準化する必要性はますます増している。たとえば、最近のスマトラ沖地震は、インド洋を中心に大津波を引き起こし、国際的に大規模な被害をもたらした。地震発生時に正確な情報を迅速に発信し、受け取る側も緊急に処理できるなら、被害を食い止めるのに役立つだろう。したがって緊急事態を適正に管理するための標準データ形式は必須であるといえる。
また近年、災害発生と共に、国際的な救援チームが支援のために現地入りすることが多い。この意味においても、データ標準化は必要である。せっかく災害や被災者についてデータが存在していたとしても、交換可能な標準形式がなければ、言語の異なるチームにおいてはコミュニケーションの難しさを増すことになるからである。
こうした点を考えると、グローバリゼーションの進む今の時代に、緊急事態管理のための国際的なデータ標準が存在することには大きな意義がある。CAPの守備範囲が広がり、国際的な救援活動支援まで含まれることを期待したい。


【リスト1】

<?xml version=”1.0” encoding=”UTF-8” ?>
<alert xmlns=”urn:oasis:names:tc:emergency:cap:1.1”>
 警報の識別情報など
  <info>
   事象のカテゴリーや発生位置、その他の説明
  </info>
</alert>

 

2005年11月29日:XMLカタログv1.1がOASIS標準として承認される

OASISは、XMLカタログ(XML Catalogs)のバージョン1.1をOASIS標準として批准し、正式決定した。
XMLカタログは、XMLプロセッサがXMLデータを処理する場合に、外部識別子を使った実体(エンティティ)による参照を解決するための情報を提供する。XMLは、データの置かれるプラットホームに依存しない記述を行うため、外部のファイルやデータについては独自の形式で参照を行う。この参照を、各プラットホームに準じた参照形式にマッピングするのがXMLカタログである(参照するものが物理的に存在していない場合にも対応している)。
XMLの処理系の実装は、実装者の裁量にゆだねられる範囲があるが、XMLカタログは、実体(エンティティ)を物理ファイルに対応づける面で検討できる技術の一つである。

OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)は非営利の国際的なコンソーシアムで、団体会員600以上、個人会員を含めると5,000人以上が参加している。会員は世界の100ヶ国以上にいる。OASISの目的はe-ビジネス標準の開発や統合、またそれらの採用を推進することにあり、セキュリティ、Webサービス、コンフォーマンス、商取引、サプライチェーン、公共部門、そして相互運用性に関する世界標準を作成している。
OASISは特にXMLとWebサービス分野で、公共部門を含む、世界的な業界標準の作成と普及を目指している。OASISの前身は、1993年に設立されたSGML Openである。SGMLとはXMLの前身で、汎用的なマークアップ言語のことである。XMLの普及に伴い、SGML Openは1998年にOASISと名称を変更した。
OASISで有名な標準には、文書形式のDocBook、電子商取引のebXML、WebサービスのUDDIなどがある。また、OASISはXML関連の情報ポータルサイトであるCover Pages(http://www.xmlcoverpages.com)やXML.org(http://www.xml.org)を主催している。
OASISにはいくつかの技術委員会がある。OASIS委員会で承認された技術仕様は、一般公開され、少なくとも4つの組織によって実装された後、コンソーシアムの全会員によって批准されて、「OASIS標準」になる。





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