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SVG オンライン・パブリッシング・ソリューション 『LayoutMagic』に迫る!

2005年02月01日作成 

エンドユーザから見た効果的なパブリッシングとはどのようなものでしょうか。もっと簡単に、もっとタイムリーに、そんな要求に応えるべく新たな視点から開発されたパブリッシングツール「LayoutMagic」について、株式会社サンブリッジ ソリューションズの鮫島氏にお聞きしました。


サンブリッジ ソリューションズ社はどんな会社ですか。

弊社は、サンブリッジ社のグループ企業です。もともと、サンブリッジ社がベンチャー企業や面白い技術を持つ企業への投資や育成を行う際に、サンブリッジテクノロジーズ社とイー・ブリッジ社の2社で、それぞれの企業様に足りない機能を支援させていただいていました。サンブリッジテクノロジーズ社は技術面を、イー・ブリッジ社は販売とマーケティング面でのサポートをしていましたが、両者を融合させたらもっと面白いサービス、ソリューションを提供できるのではないかということで、去年の7月に合併しサンブリッジ ソリューションズ社を設立いたしました。

今後は、マーケティング支援・販売支援・技術支援に加え、技術面とマーケティング面の両方を生かすためのプロダクトマーケティングやプロダクトセリングを視野に入れております。わたしが所属しているプロダクトビジネスグループではLayoutMagicや、QuickAgentという製品を掲げてマーケティングや開発を行っております。

LayoutMagicの製品概要を教えてください。

LayoutMagicは札幌に開発拠点を持つ(株)レゾロジック社が開発した製品です。レゾロジック社ではLayoutLogicという製品を持っており、このLayoutLogicがLayoutMagicのコアのエンジンとなります。レゾロジック社はこのLayoutLogicを用い、3年程前から、様々なソリューションを提供されてきました。このLayoutLogicのインタフェイスや機能を整理し、パッケージ化したものがLayoutMagicになります。LayoutMagicは昨年12月にリリースされましたが、このような経緯もあり、実質、多くのユーザ事例と、すでにこなれたエンジンを持った製品となっております。

LayoutMagicはDMやPOP、小冊子などの制作に適しています。小冊子の場合には、ある程度レイアウトや内容が定型化されており、エンドユーザ側の意思で最終的なレイアウトを調整したい場合などに非常に有用なツールです。

従来、チラシやPOPなどの制作物を作る場合は、印刷会社とデザイン会社とエンドユーザ(クライアント企業)の三者が知恵を出しあって作っていました(図1)。

制作過程では、どうしてもその三者の関わりが必要ですが、残念ながらそれぞれの役割の間には大きな隔たりがあったと思います。例えば、チラシの概要を決定する立場にあるエンドユーザにとっては、デザイン系・印刷系のソフトウェアは、操作が難しく、分からないルールや用語がたくさんあります。しかし、共通に使える道具があればワークフローを効率化することができるのではないかという発想のもと、LayoutMagicが誕生しました(図2)。

LayoutMagicはどのような魅力や特長、こだわりを持った製品ですか。

一番の特長はインタフェイスにあります。非常に忙しい中で、エンドユーザが内容を決定し作成するためには「操作が簡単かどうか」が鍵となります。LayoutMagicは、操作を覚える場合も、実際に作成する場合も短い時間で簡単にできるのが魅力です。

例えば、ボタンが沢山あると逆に使いにくく感じられることが多いようです。LayoutMagicはオブジェクト単位で考えることができる仕様ですので、編集・印刷・保存という3つのボタンだけで操作を完了できるように設定することができます。グリッドデザインタイプのインタフェイスを用意することもでき、この場合にはどの位置に何を表示させるかを定めていますので、配置する枠をクリックすると対象素材の一覧が表示され、素材を選択すると配置されるという、非常に直感的なインタフェイスになっています。

また、LayoutMagicはPHPベースとJAVAベースの2つのバージョンを用意しておりますので、必要に合わせて選んでいただけます。例えば、ECサイトと連携し利用するといったアプリケーションサーバを用意しなければならない場合は、JAVAベースの方が接続しやすいかもしれませんし、システムのキャパシティを考えてコントロールしやすいPHPベースを選択するなど、用途に合わせてお選びいただけます。ただ、PHPベースの方が、初期の敷居が低いのでそちらを選ばれる方が多くいらっしゃいます。

さらに、フリーのプラグインであるAdobe SVG ViewerとAdobeReader、そしてブラウザがあれば制作ワークフローの中に入ることができるという点も特長となっています。フォントに関してはライセンスの問題をクリアしていただく必要はありますが、サーバ側にご用意いただければ、クライアント側で用意する必要がないのは大きな魅力だと思います1(図3)。

このようなネットワークを使った組版およびレイアウトツールでは帯域を心配されるお客さまもいらっしゃいますが、SVG(Scalable Vector Graphics)を使用していますので、サーバとやり取りするのは変更したパーツ部分のみで済みます。XMLが持っているドキュメント・オブジェクト・モデルのおかげで、個別のオブジェクトに対しての追加や変更、削除が可能ですから、帯域はそれほど太くなくても大丈夫です。ただ、全体を最初に表示するために一通りデータをダウンロードすることを考えて、1.5Mbps以上を推奨しております。また、印刷用の画像が実際は何十~何百MBというサイズであっても、表示の際は圧縮した画像のみがやり取りされますし、全体を見たい場合でも参照用PDFに自動変換されます。ネットワーク環境にも左右されますが、プレビュー速度は一般的なパブリッシングのツールと比べて早いことが多いです。

SVGを採用されているのはなぜですか。

一番の理由は非常に拡張性が高いことです。例えばサーバ側のプログラム上でSVGを変換しようとした場合、すでに用意されている様々なライブラリを使用することができます。フロント側はAdobeSystemsのSVGビューアーでサポートされていますので、JavaScriptやVBScriptで表示しているオブジェクトに対し、直接細かい操作をすることができます。また、プログラムを組みやすいので、工数が少なくて済むという利点もあります。 さらに、データ形式がXMLベースなので、特定のオブジェクトに対し様々な属性を与えることができます。例えば、チラシ制作と販売管理を融合させて、チラシの配布に対する売上の効果測定を行うなど、マーケティングの分析に利用することもできます(図4)。

LayoutMagicはどのようなマーケットやニーズに応えると思われますか。

チラシなどの紙媒体を、販売するための重要なツールとして捉えて有効に活用したいと考えておられる場合に最適です。売り上げを伸ばすために、どの商品をチラシの目立つ場所に置くのかということや、商品にどんなキャッチコピーを付けるのかを十分に検討したい場合。また、競合他社の動きを見た後で、金額を変更して入稿したいといったタイムリーな製作にぴったりだと思います。制作期間を非常に短くできるという点が大きな特長ですから、入稿のぎりぎりまで待って意思決定をすることができます。

さらに、複数の支店や店舗がある場合、それぞれの地域の特性を見極めオリジナリティのあるチラシを制作することができますし、各支店が効果的にチラシを使っているかどうかを本部が把握することもできます。チラシを作成した際に、何千部刷ったのか、どの地域に配ったのか、どこの印刷会社で印刷したかというところまでログとして残すことができますから、管理する側にとって今まで見えなかった部分が見えるという点も良い結果につながっているようです。

LayoutMagicを利用した制作のワークフローはどのような想定ですか。

まず、デザイナがIllustratorやInDesignといったデザイン用のツールを使用してマスターページ(台紙)やテンプレート、各素材のデザインを作成し登録します。入力フォームのフォントやサイズ、配置位置などもこの時点で設定します。

次にエンドユーザは用意されたテンプレートの中から1つを選びます。その後、各店舗に合わせた素材を選択し、テンプレートの上に配置します。素材の大きさや位置を変更したり、必要であればテキストの入力や変更を行うこともできます。レイアウトの確認が終了すると、印刷会社にPDF/EPSフォーマットで入稿され、印刷、製本、発送となります(図5)。

エンドユーザとデザイン会社、印刷会社の三者が連携して制作するという点は従来と同じですが、LayoutMagicを使うことで全てのデータをサーバ上でやり取りすることができますから、三者がより密接に効率良く工程を進めることができるようになります。

大きいチェーン店などは、長い目で見ると非常にコストが下がるでしょうね。

そうですね。実際に導入後の制作コストが1/5程度になったという例もございます。また、印刷会社の立場から見ると、このシステムを導入することで今まで行ってきた仕事が減るのではないかと感じてこわごわと始められることが多いのですが、制作コストが削減されて売り上げの効果が出てくると、エンドユーザ側はもっと種類を用意してたくさん作ろうと考えるようになります。そのため印刷部数や種類が増え、結果的に利益が上がるという良い循環になっているようです。さらに、制作物の確認やデータの受け渡しのために、営業の方が行き来する時間がなくなった分、印刷に専念することができるというのも良い点です。

ユーザ事例をいくつかご紹介ください。

LayoutMagicが正式にリリースされたのは2004年12月ですから、現時点で実際に公表できる事例はまだありません。ですが、開発された(株)レゾロジック社がLayoutMagicのベースとなるLayoutLogicを用いた様々な事例はLayoutMagicとしても適用できますので、LayoutLogicの事例をご紹介したいと思います。

あるスポーツクラブのチェーン店では、店長が最終的なレイアウトを行っています。用意されたテンプレートを選びますと、ログインしたユーザのプロファイルに合わせて地図や住所などの情報は自動的に割り付けられます。キャンペーンの日付を入力したり、自分の施設に合うプログラムを選びます。スポーツクラブのようなチェーン店だと、プールやテニスコートが用意されているかどうかは店舗によって違いますし、子どもや主婦が多いのか、ビジネスマンが多いのかといったターゲット層に合わせてプログラムが組まれているので、店舗ごとにチラシを作成する必要があります。つまり、全体的な体裁は統一する必要がありますが、プログラムなどはまったく別のものを掲載する必要があります。店長は、割り付ける箇所を文書上でクリックします。するとそこに割り付けられる素材の一覧が表示されますので、その中から自分の店舗に合わせたプログラムの素材を、またマウスのクリックのみで選びます。すると該当箇所にその素材が割り付けられるのです。

つまり、自動的に決められるところは極力自動で、人の意思がかかわる必要のあるところはマウスのクリックだけで(この例の場合には2クリックのみ)レイアウトを決められるわけです。この事例の場合は、レイアウトが完成したら、本部に対して「何月何日にチラシを配ります」といった申請をします。本部はその申請を見て、問題がなければ承認し、承認されると今度はそれが印刷会社にメッセージとして送られ、印刷会社はデータをサーバから取得して印刷を行います。

このような形体のチラシ制作事例が一番多いですが、特徴としてはチェーン展開されている、もしくは複数の店舗をお持ちで、かつ店名だけを変更すればよいといった簡単な変更だけでは済まないパターンがほとんどです。物理的な問題として、置いている商品がまったく違うとか、用意するプレゼントを店舗によって変えているといった理由などがありますが、チラシを制作する段階で、各店舗の意志を反映することが可能です。本部としては、それぞれの店舗がどのようなことを考えているのかを知り、結果的に営業戦略に活かしたいと考えているようです。

小冊子なども作成できるとのことですが、ページ物の制作はどのように行われていますか。

表紙や中に入る広告は別途デザインが必要になるので、すべてのページをLayoutMagicで制作するというわけではありません。例としては、カタログなどの制作に適しています。例えば、あるカテゴリーに含まれる全ての製品をリストとして載せる場合など、ページのどの位置にどのような情報を掲載するのかを指定し、データベースと連動してレイアウトするといったことはLayoutMagicが非常に得意とする分野です。カスタマイズによって自動組版することも可能です。

他には、パーソナライズしたDMの制作にもお使いいただいています。宛名部分の変更はもちろんですが、特定の人を想定しながらチラシ1枚1枚にどの商品を載せるかを決めて、その人向けの価格を設定されたという事例があります。パーソナライズと一言で言っても、CSVファイルなどと連動してボタン1つで自動的に作れるようなものを望まれる場合もあります。

また、面白い分野としてCAD的な利用例があります。(株)ミスミ社のecagent.com2というECサイトでご覧いただけます。これは、工業部品の購買代理ポータルサイトになっており、例えば金属の箱やパネルに任意の穴加工を施して納品などを行うというサイトです。UIはFLASHになっているのですが、FLASHだけでは指定はできても細かい図面を正確に描くことができませんでした。LayoutLogicはSVGがベースになっているので正確な図面を作成できます。金属を選択した後、穴のサイズや形状、位置を指定し、確認してオーダーします。確認用データはCADのデータそのものですから、そのまま製造工程に回すことができます。同じ様なパターンとして、ケーブルの配線をSVGで指定してオーダーできるサイトもありますが、どちらも図面としてのデータをオンラインで作る必要があるのでLayoutLogicが最適でした。また、CADデータの利用という面ではファシリティマネージメントといった方面の用途もあると思っています。

LayoutMagicは現在パッケージとして販売されていますが、今後ASPサービスで提供することもお考えですか。

将来的にはしたいと思っています。例えば、ASPサービスの裏側でお客さまの要望に合わせて関連付けるためのデータを用意しておき、それを今度はマーケティング分析の方に回す。さらに、マーケティングのプロフェッショナルサービス的、もしくはコンサルティング的に分析したデータを基にお客さまにご提案したり、逆にお客さま自身がそのデータを見て、判断できるような形を提供していくこともできるでしょう。そのためには当然、24時間の運用や他のツールとの連動、XMLならではの繋ぎ込みは必要になってくると思います。技術に関して、特に躊躇する部分がありませんし、XMLのデータをどのように利用すれば良いかというノウハウも持っております。加えてマーケティングや実際のコンサルティング的なノウハウがありますので、それらを融合してお客様にご提供できればと考えています。

御社としてのXMLに関するビジョンについて教えてください。

弊社にはXMLに関係する話も多くいただいています。XMLに対する開発力もありますので、エバンジェライズ的なことを行ったり、それぞれを支援することに加えてXMLに関する事柄の交通整理ができればと考えています。つまりXMLに関するマーケティングや技術、ツールなどで足りない部分があった場合、弊社が間に立ってそれぞれを繋ぎ、必要な部分を補うということも役割の一つだと思います。後は、実際に応用できる分野があるかどうかは分からないものの、技術的には非常に面白いので作ってみたという製品に対して、実際にどのような場で利用すれば便利なのかソリューションを提供したり、弊社のLayoutMagicと合わせて提供させていただく可能性も考えられます。さらに、マーケティング面でXMLを利用するというのは、われわれならではの色だと思いますのでそういう色をどんどん出していきたいと思っております。

本日は興味深いお話を聞かせてくださり、どうもありがとうございました。

株式会社サンブリッジ ソリューションズ
プロダクトビジネスグループ
プロダクトマーケティングマネージャ
鮫島 正好 氏
1966年栃木県生まれ。日本DEC(株)、Interleaf Japan(株)、Adobe Systems(株)を経て、現在に至る。日本DECの頃よりパブリッシングシステムに開発チームの一員として参加。アドビシステムズ在席時にSVGと出会い、その可能性に魅了され、現在は(株)サンブリッジソリューションズにてLayoutMagicのプロダクトマーケティング業務に従事。



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