NewsDX 第30号
2008年04月01日作成
1.Webサービス関連仕様
Webサービス関連仕様も、新しい規格が次々と開発され競合するというフェーズは過ぎたようである。従って、昨年後半以降発表された主な規格は以下のように数は少ないが、その主なものを以下に紹介する。
1.1 W3Cで勧告となったWebサービス関連規格
- W3C Web Services Policy(WS-Policy)1.5(2007年9月)
- Web Services Policy Attachment(WS-PolicyAttachment)1.5(2007年9月)
Webサービスのポリシーを記述するためのモデルと文法を定めた規格(WS-Policy)、そして、そのポリシーを対象となる主体やWSDLなどに結び付けるための一般的なメカニズムを定めた規格(WS-PolicyAttachment)。
- Web Services Addressing 1.0 - Metadata(2007年9月)
Webサービスとメッセージを特定(address)するための機構を定めたWS-Addressing(2006年5月W3C勧告となった)の関連仕様であり、 WS-Addressingで規定された抽象的なプロパティをWSDLを用いて記述する方法、エンドポイント参照にWSDLメタデータを取り込む方法、WS-AddressingをサポートしていることをWS-Policyを使って示す方法を規定している。
1.2 WS-I仕様の国際規格化
Webサービスの規格をさらにプロファイル化することによって相互運用性を高めるためWS-Iで制定された以下の3つの仕様がISOに持ち込まれ、国際規格としての承認を得るべく審議が行われている(→の先がISOにおける規格番号)。
- Basic-Profile1.2 → ISO/IEC DIS 29361
- Simple SOAP Binding Profile1.0 → ISO/IEC JTC1 DIS 29363
- Attachments Profile1.0 (第2版) → ISO/IEC JTC1 DIS 29362)
Webサービスも、SOAPやWSDLの使い方に違いが出てしまうと相互運用性がなくなるので、これらのプロファイルが国際規格化されることは望ましいことである。プロファイルはWebサービスで利用する規格の使い方を約束事として決めるものなので、WS-Addressingなどの新規格への対応も必要となる。このため、WS-Iでは、Basic Profile1.1に続く、Basic-Profile1.2、Basic-Profile2.0のドラフト化も進行中である(これらはISOには送られていない)。
2.SOA関連動向-OSOA仕様
Webサービスも利用しつつ、標準化された手法で呼び出すことのできるソフトウェアの部品を結合してアプリケーションを構築しようというのがSOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)である。その標準化された手法としてSOAPメッセージを使ったWebサービスを適用するのが一つの実現手段となる(必ずしもWebサービスが前提ではない)。
このSOA関連の仕様策定などを行うため、2005年にオラクル、IBMなどが協力して設立したOpen Service Oriented Architecture(OSOA)が、以下の標準仕様の原案を作成した。2007年4月に、標準仕様とするための審議をOASISが担当することがアナウンスされた。ただし、現在のところ、仕様文書の更新などはOSOAのWebサイト上で行われているようである。以下にOSOAの開発した2つのグループ仕様を説明する。
2.1 SCA(Service Component Architecture)
SCA(Service Component Architecture)は、様々な言語でサービスコンポーネントを作成するためのモデルであり、またSOAに基くソリューションを構築するためのサービスコンポーネントを組み合わせて使用するためのモデルでもある。現在、バージョン1.0が開発されており、以下の仕様群から成る。
- SCA Assembly Model V1.00(2007年3月21日)
- SCA Policy Framework V1.00(2007年3月21日)
- SCA Transaction Policy Draft V1.00(2007年12月3日)
- SCA Java Common Annotations and APIs V1.00(2007年3月21日)
- SCA Java Component Implementation V1.00(2007年3月21日)
- SCA Spring Component Implementation V1.00(2007年3月21日)
- SCA BPEL Client and Implementation V1.00(2007年3月21日)
- SCA C++ Client and Implementation V1.00(2007年3月21日)
- SCA Web Services Binding V1.00(2007年3月21日)
- SCA JMS Binding V1.00(2007年3月21日)
- SCA EJB Session Bean Binding V1.00(2007年3月21日)
- SCA COBOL Client and Implementation V1.00(2007年9月24日)
- SCA C Client and Implementation V1.00(2007年9月24日)
- SCA JCA Binding V1.00(2007年11月5日)
2.2 SDO(Service Data Objects)
SDO(Service Data Objects)は、データ形式に関わりなくアプリケーション内でデータを操作できるようにする統一的手段を提供する仕様であり、データベースやサービスなどでのデータ操作を行う手法を提供する。バージョン2.1が開発されており、以下の仕様群から成る。
- SDO for Java Specification V2.1(2006年11月)
- SDO for C++ Specification V2.1(2006年12月)
- SDO for COBOL Specification V2.1(2007年9月)
- SDO for C Specification V2.1(2007年9月)
3.XQuery1.0/XSLT2.0のツール
XQuery1.0とXSLT2.0は、共に2007年1月にW3C勧告となったが、気軽に試してみることのできるツールはまだ少ない。現時点で主なものは以下のものである。
3.1SAXON
XSLT2.0のエディターのMichael Kay氏の作成したSAXONは、XML Schemaを認識した動作が行える(schema-aware)バージョン(Saxon-SA)とそれを含まないバージョン(Saxon-B)の2つが提供されている(http://www.saxonica.com/)。schema-awareバージョンは有償である。
3.2AltovaXML
これに対し、XML Spyで有名なオーストリアのALTOVA社は、schema-awareのXQuery1.0/XSLT2.0をサポートしたAltovaXML 2008をロイヤリティ・フリーで提供している(http://www.altova.com/altovaxml.html)
標準規格も使える製品の選択肢が増えないことには普及しない。今後、他のベンダーからXQuery1.0/XSLT2.0の実装ツールの提供が続くことを期待したい。