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【開発者コラム:XML Dev魂】 気になる!Netscape 6

2001年02月01日作成 

XML Dev魂(でぶこん)
気になる!Netscape 6    

(有)サイラス
梅原 伸行


<この記事はDigital Xpress 2001 Vol.1(2-3月号)に掲載されたものです>

Q.「現在、ブラウザにInternet Explorer 5 を使っていますが、最近、Netscape 6 が気になっています。どんなメリットがあるのか教えてください。」(東京都港区 N.N)

この質問は、「XML開発者入門」という位置づけの本コーナー
「XML DEV 魂(デブコン)」
の趣旨と一見反するように見えますが、とても興味深いテーマであるので、お答えしたいと思います。

ご存じの通り、Internet Explorer(IE)はMicrosoft Windows全製品にバンドルされているWebブラウザです。最近は、iMacにも標準で搭載されていたり、UNIX版もあり、ブラウザユーザのなんと 86.08% がIEを使用しています。一方、Netscape Navigator (NN)のシェアは13.90%で、他のブラウザを使用しているのは0.02%となっています。(2000年6月現在。WebSideStory調べ。他のブラウザについてはコラム参照。) ほんの3年ほど前には、Netscapeのシェアが70%もあったことを考えるとこのシェアの落ち込みは、いかんともしがたいものがあります。(といっても、インターネットユーザの93.63%がMicrosoftのOSを使用しているから仕方ないのですが。)

このように、「ブラウザ戦争での敗者」としてのイメージが強いNetscapeですが、'98年3月 同社の勇気ある決断によりオープンソースとして公開し、世界中の雄志あるデベロッパーの支援によりソースコードが完全に書き直され、この度、クールで軽快、かつ高度のカスタマイズが可能な Netscape 6 として甦りました。

ちなみに、IE/NN問題が「とても興味深いテーマ」であると述べたのは、Netscapeのシェアが現時点で落ちていると言っても、依然、企業ユーザの中にはセキュリティなどの関係でNetscapeを採用しているところも多く、ウェブサイト開発の現場においては Netscape を無視するわけにはいかないからです。それで、自分はたとえ IE しか使わないとしても、Netscape についてある程度知っておくことは、成功するサイト構築のために必要です。

さて、Netscape といってもバージョン "4.x" と "6" ではまったく別物なのですが、今回は "6" にフォーカスを当てたいと思います。

Netscape 6の特徴およびIE5に比較したメリットを以下に示します。なお、私の主観で重要かつ興味深いものほどフォントが大きくなっています。

1)新しいブラウザ・エンジン "Gecko"搭載

  • Gecko は小型で高速、標準規格準拠を目的としたブラウザエンジンであり、GeckoのおかげでNetscape 6 ではダウンロード速度向上、快適なページ表示を実現している。Netscape Gecko は埋め込み可能で、無料、オープン ソースである。
  • IE5に比較したメリット:インストールサイズが小さく、表示も速い。(ただし、体感で非常に速いというわけではない。インストールサイズについて言えば、最初からプリインストールであるならば問題にはならない。)

2)各種標準に完全対応

  • XML、Cascading Style Sheets level 1、W3C DOM level 1、Resource Description Framework に完全に対応。
  • CSS2 の位置指定、DOM2 イベント モデル、CSS インターフェースについてもサポート。
  • JavaScript 1.5 対応。
  • Open JVM Interface(OJI)を利用して、Java を強力にサポート。OJI を使用することにより、リリースと同時に新しい OJI 準拠の Java Virtual Machines をダウンロードしてブラウザで使用することが可能。
  • IE5に比較したメリット:CSSサポートがNetscape 6の方が優れている(と言われている)。一方、IEでサポートしているDHTMLやXSLTについては未サポート。

3)クールで効率の良いインタフェース

  • ボタンの数が減りユーザーインターフェースも簡略化された。
  • 「テーマ」を設定することにより、「外見」を変更して外観や使い勝手をカスタマイズ可能
  • XML ベースのユーザーインターフェース言語 XUL (XML User Interface Language)に対応
  • 「My Sidebar」機能という「ミニブラウザ」が表示可能で、デフォルトで「検索」「関連サイト」「ニュース」などのタブが用意されている。
  • IE5に比較したメリット:ユーザーインターフェースをXULにより高度にカスタマイズすることが可能(一方のIE5.5では「Webアクセサリ」と呼ばれるカスタマイズ機能を提供している)。

4)プライバシーの強化

  • パスワード マネージャー、Cookie マネージャー、フォーム マネージャーにより、パスワードなど個人情報を安全に保存管理できる。
  • IE5に比較したメリット:IE5にもIntellisenseによる「オートコンプリート機能」があるが、Netscape 6ではオプションとして暗号技術付きで実装し、よりセキュリティが高くなっている。

5)強力な統合検索機能

  • さまざまな検索エンジンから選んで、結果をSidebarに表示することができる。
  • 検索機能にアップルのSherlock技術を採用
  • IE5に比較したメリット:社内イントラネットサーバーをはじめ、様々なサイトやエンジンの検索もブラウザから簡単に行うことが可能(IE5でも「検索アシスタント機能」により複数検索エンジンを用いての検索は可能)。

このようにNetscape 6はバージョン4.x系コードベースとは決別することにより、「標準規格への業界随一の対応、小さいダウンロードサイズそして強力な検索機能などを含む、新しいエキサイティングなインターネット体験を実現」が可能となりました。

その一方で、「LDAPの未サポート」という4.x系からの機能デグレードがあり、企業ユーザーの方であればバージョンアップを躊躇するところかもしれません。

それで結論ですが、現時点でIE 5と比較するならば、Netscape 6はシェアを急速に取り返すものではないとしても、
通好みするブラウザ
であり、Web系のお仕事に携わっている方であるなら、デスクトップに置いておきたい一品と言うことができるでしょう。

XULについては、別の機会にカスタマイズ方法を取り上げたいと思います。今回は付録として「ブラウザ史」を添付します。

<コラム-IE、NN以外のブラウザについて>

  • Mosaic (NCSA):元祖Webブラウザ。Netscapeが台頭してくる93~95年くらいまでWindows、 Macintosh、 UNIXで広く使われる。97年3月にバージョン3.0がリリースされたのが最後で、その後はバージョンアップされていない。ちなみに、IEはMosaicをベースに開発が行われた(IEの「ヘルプ」-「バージョン情報」から確認できる)。また、Mosaicの開発者であったマーク・アンドリーセン氏がNetscape社の創業者であることは有名。(現在は退社し、loudcloud社のChairman)

  • Amaya(W3C):W3CがHTML等の検証用に開発しているブラウザおよびエディタ。最新バージョンは、2000年11月20日リリースの4.0で、HTML 4.0、 XHTML 1.0、 HTTP 1.1、 MathML 2.0、および CSS 2の多くの機能をサポートしている。Amayaで作成・編集したWebページには、ロゴアイコンを挿入することが可能。

  • HotJava(Sun):java.sun.comで公開されているJavaに特化したブラウザ。JavaTM Development Kit (JDK) 1.1.6、HTTP 1.1、HTML 3.2++、Java Archive (JAR) Formatなどのインターネット標準に対応している。

  • JustView(ジャストシステム):日本発のWebブラウザ。「一太郎」などにバンドルされている。最新版は3.01。バージョン2.0においては、世界に先駆けてJava開発環境JDK1.1を採用した。

  • Mozilla(mozilla.org):Netscapeが98年に設立したオープンソース開発のための組織"mozilla.org"が開発中のブラウザ。その成果物がブラウザ・エンジン"Gecko"であるが、mozilla.orgではGecko搭載のブラウザ"Mozilla"をMilestone 18まで開発している。Mozilla 1.0は2001年第2四半期出荷予定。Geckoエンジンはフリーであるため、K-Meleonにも搭載されている。

  • その他:Opera、1X、iCabなど。

<表1:ブラウザ史 >

   
Mosaic
Netscape Navigater
Internet Explorer
Java
1993 1 1.0 リリース      
1994 12   1.0リリース    
1995 3       HotJava配布開始
  4   1.1リリース    
  7   1.2リリース    
  8     1.0リリース。Windows 95出荷。 Windows 95 PLUS packにIE1.0含まれる。  
  10 2.0リリース      
  11     2.0リリース  
1996 3   2.0リリース    
  7     Windows NT4.0 出荷開始  
  8   3.0リリース 3.0リリース  
  10     3.01リリース。Windows 95 OSR2 出荷。(IE3.0含まれる)  
1997  1 3.0リリース。NCSAからの最終リリース。      
  3   シェア70%となる。    
  5       JDK V1.1
  6   4.0リリース    
  10     4.0リリース  
  11     4.01リリース  
  12     JDK V1.1.5
1998 3   ソースコード公開開始   JDK V1.1.6
  6     Windows98出荷  
  9       JDK V1.1.7
  10   4.5 リリース    
  12       JDK V1.2 (Java 2)
1999 2   シェア33.43% シェア64.06%  
  5     5.0リリース  
2000 4   6PR1リリース    
  7   シェア13.90% 5.5リリース。シェア86.08%に。  
  8   6PR2リリース    
  9     Windows Me出荷。IE5.5含まれる。  
  10   6PR3リリース    

注)時期はアメリカでのリリースを基準としている。おおざっぱなものなので、ご参考程度に。
 
<参考資料:>
http://sp.cis.iwate-u.ac.jp/sp/lesson/j/browser.html
http://www.zdnet.co.jp/magazine/pcmag/9806/
windows98/history8.html

http://www.zdnet.com/devhead/resources/tag_library/history
http://www.zdnet.co.jp/news/0009/08/berst.html
http://www.zdnet.co.jp/eweek/0011/15/00111508.html





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