XML
Dev魂(でぶこん)
XMLでクールなWebページを作るには?(その2)
(有)サイラス
梅原 伸行
<この記事はDigital
Xpress 2001 Vol.3(6-7月号)に掲載されたものです>
Q.XMLを使って「クールなWebサイト」を作るにはどうしたらよいのでしょうか?(山形県T.F.) |
先回は、「そもそもクールなWebサイトとは、どのようなものを言うのか」ということに絞って述べました。結論は、
「顧客一人ひとりが求めている情報にすばやく到達可能なWebサイト」
ということでした。今回は、いよいよ質問の本題、つまり、「XMLを使った」の部分に取り組んでいきたいと思います。
「XMLを使ったクールなWebサイトを作る方法」は、「ブラッド・ピットを使ったクールな映画を作る方法」に例えることができます。「ブラッド・ピット」
は言うまでもなく、世界的に人気のある俳優であり、出演した映画はたいてい「クール」と呼ばれ、興行的にも成功を収めているようです。また、アカデミー助演男優賞にもノミネートされた実力派であり、「冒険家」・「刑事」・「テロリスト」など、幅広い役柄を演じることのできる役者としても知られています。しかし、だからといって、「ブラッド・ピットを使った映画=クール」というわけではありません。たとえば、
「ブラッド・ピット主演『北条時宗』 」
というのは、どうでしょうか?確かに、ブラッド・ピットの新境地を切り開く作品にはなるかもしれませんが、彼の持ち味はあまり活かせないかもしれません。まず、言葉の問題がありますので、せりふは英語で字幕翻訳にするか、むりやり片言の日本語でやってもらうかになります。いずれにしても見る側には負担がかかりますし、せっかくの作品も台無しになってしまうかもしれません。(もっとも、こういうキャスティングは、あり得ないとは思いますが。)
同じことが「XMLを使った」場合にも言えます。XMLは言うまでもなく、世界的に人気のある「データ形式」であり、採用したWebサイトはたいてい「クール」と呼ばれ、「XMLを使えばB2B(注1)を成功させることができる」と思われています。また、マイクロソフトの".Net"戦略(注2)や各種B2B標準に採用された実力派であり、「文書」・「Webページ」・「データベース」など、幅広い役柄を演じることのできる「データ形式」としても知られています(図
1)。しかし、だからといって、「XMLを使ったWebサイト=クール」というわけではありません。「XML」にも「持ち味」があるのです。
図 1 XMLを応用した標準仕様(注4)
では、「XMLの持ち味」、つまり、「XMLを使用するメリット」は何でしょうか?つきつめれば、以下の三点にまとめられると思います(注5)。
- 仕様や要件の変更に強い:データの各項目を自由に定義できる。データ定義の変更も容易。
- 開発生産性が高い:HTMLと記述方法が似ているため習得しやすい。「レイアウト」と「情報」を分離して開発可能。基本的にクライアント側にAccessやExcelのような専用アプリは不要なので導入しやすい。開発ツール、ドキュメント類も豊富。
- Webとの親和性が高い:XMLからHTMLへの変換が容易。HTMLのようにプロキシやファイアウォールを越えての送受信が可能。IE5やNN6ではXMLを標準サポート。
このように、XMLは「柔軟性」と「拡張性」という持ち味を持っているわけですが、それをうまく活かせる場合とそうでない場合があるのも事実です。もし、うまく活かせるなら、一般に知られているようにシステム開発と保守の効率化を図ることができますが、そうでないなら、「ブラッド・ピット主演『北条時宗』」のようになってしまう可能性は大いにあります。では、うまく活かせるかどうかをどのようにしたら見極めることができるのでしょうか?
第一に、XMLの得意分野を知っておくことは大切です。以下にXMLが有効なシステムの幾つかを示します。(注6)
- 情報を抽出し、様々な形態で表示するシステム(コンテンツとしての利用):
- 電子カタログ/電子マニュアル:複数のビュー(テーブル表示・リスト表示・詳細表示など)を持つ情報の表示。
- 電子図書館/電子美術館/電子博物館:電子的に保存された図書の閲覧、美術品や展示品の鑑賞を行う。
- 異なる端末向けのコンテンツ:株価情報やニュース配信のように、コンテンツをパソコンだけでなく、携帯端末(iMode・J-スカイウェブ・EZウェブなど)など複数の端末にも向けて発信するシステム。
- 情報を蓄積し、共有化し、再利用する業務システム(メタデータとしての利用):
- ナレッジ・マネジメント:企業内で共有する情報、ノウハウ、知識などを効率よく管理して、意志決定や業務改善に反映。
- 異なる業務処理間でデータを流通させるEDIシステム(メッセージとしての利用):
- エレクトロニック・コマース(EC):企業間(B2B)や企業と個人間(B2C)の取引を電子的に行う。
- サプライチェーンマネージメント(SCM):部品、資材の購入、商品の生産、在庫、販売、物流などのモノの流れを管理して経営効率を向上させる。
- 電子政府:各種の申請や届け出をネット上で行う。
「抽出(検索ではない)」「再利用」「流通」というのが見極めのポイントになりますが、もしそれらがシステム要件として含まれていないのであれば、別段、XMLを使う必要はないと言えます。たとえば、当面、パソコン向けにしか情報提供する予定はなく、ビューも切り替える必要がないならば、何も"XML(+XSLT)"にこだわることはありません。
XMLをうまく活かせるかどうかの2番目のポイントは、冒頭で挙げた「すばやく到達可能」ということ、つまり、
「XMLを使うことによってクライアントが満足のゆくパフォーマンスを得られるかどうか」
ということです。これまでは、XMLの将来性や可能性ばかりに目が向けられ、かつてのJavaがそうであったように少々過熱気味でしたが、近頃は導入事例も増え、この点が正面から論じられるようになってきました(注7)。
XML導入のメリットが高らかに謳われる中、いざ導入してみると思ったようなパフォーマンスが得られず、結局、多くの投資をしたもののXML採用を断念したという例もあるようです。
では、実際のところ、どのようにしたらクライアントに満足のゆくパフォーマンスを得ることができるでしょうか?このテーマは、次回、扱いたいと思います。
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