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NewsDX 第33号

2011年10月01日作成 

奥井康弘

今回は、昨年来の標準化動向として、OASISのWebサービス関連の動向、およびW3Cの最近のXQuery関連規格のアップデートとXHTML関連の動向をお伝えする。

WS-Iの仕様がOASISに移管
 ~中核規格はすでにISO化、JIS化~

Webサービスの規格として、その中核には、メッセージ交換フォーマットとしてのSOAP、WebサービスのAPIを公開するためのWSDLがあるが、サポートする仕組みや解釈の違いなどによって製品毎の実装時の差異が生じるという問題があった。

その問題を解決すべく、SOAP、WSDL利用のためのプロファイルを策定するために2002年にWS-I(Web Services Interoperability Organization)という団体が設立され、Basic Profile、Attachments Profile、Simple Soap Binding Profileなどの規格が開発されてきたが、このWS-Iは2010年7月22日に、当初の団体の目的を達成したとして、これまでに開発してきた一連の仕様をOASISに移管するとの発表を行った。2010年11月9日付けで「Basic Profile 1.2」「Basic Profile 2.0」「Reliable Secure Profile 1.0」の3つの規格の最終仕様を承認し、その活動を終えた。

なお、WS-Iの開発した「Basic Profile」、「Attachments Profile」、「Simple Soap Binding Profile」については、2008年にISOで以下のように国際標準となっている。

■ 「ISO/IEC 29361:2008」(WS-I Basic Profile 1.1)

■ 「ISO/IEC 29362:2008」(WS-I Attachments Profile 1.0)

■ 「ISO/IEC 29363:2008」(WS-I Simple SOAP Binding Profile 1.0)

これらは、その後日本でも翻訳が行われ、2010年7月にJIS化された。

■ JIS X 7361(Webサービス相互運用性-WS-Iベーシックプロファイル1.1)

■ JIS X 7362(Webサービス相互運用性-WS-I アタッチメントプロファイル 1.0)

■ JIS X 7363(Webサービス相互運用性-WS-I シンプルSOAPバインディングプロファイル1.0)

W3CのXQuery関連仕様の新規規格と更新状況

XQueryは、「XQuery 1.0: An XML Query Language」という規格のタイトルにも表れている通り、「照会」によるXMLデータ抽出を行うための機能であるが、関連した2つの新しい規格が2011年3月17日にW3C勧告(W3Cの仕様の最終決定版)となった。

■ 「XQuery Update Facility 1.0」
XQueryとXPathにデータ更新機能を持たせるための規格

■ 「XQuery and XPath Full Text 1.0」
XQueryとXPathに全文検索機能を持たせた規格

XQuery関連規格は2007年1月にW3C勧告となっていたが、4年を経て2010年12月14日に第2版が制定されている。

■ XQuery 1.0: An XML Query Language (Second Edition)
XMLのためのクエリ言語。

■ XQuery 1.0 and XPath 2.0 Data Model (XDM) (Second Edition)
「XML Path Language (XPath) 2.0 (Second Edition)」「XSLT 2.0 (Second Edition)」「XQuery 1.0: An XML Query Language (Second Edition)」のデータモデルを定義した規格。

■ XSLT 2.0 and XQuery 1.0 Serialization (Second Edition)
「XQuery 1.0 and XPath 2.0 Data Model (XDM) (Second Edition)」によって定義されるデータモデル・インスタンスをオクテット配列に配置するシリアライゼーションを定義したもの。

■ XML Syntax for XQuery 1.0 (XQueryX) (Second Edition)
「XQuery 1.0: An XML Query Language (Second Edition)」のXML構文を定義した規格。

■ XML Path Language (XPath) 2.0 (Second Edition)
「XQuery 1.0 and XPath 2.0 Data Model (XDM) (Second Edition)」で定義されるデータモデルに適合した値を処理する式言語。

■ XQuery 1.0 and XPath 2.0 Formal Semantics (Second Edition)
「XQuery 1.0: An XML Query Language (Second Edition)」と「XML Path Language (XPath) 2.0 (Second Edition)」 のセマンティクス(意味)に関する正式な定義。

■ XQuery 1.0 and XPath 2.0 Functions and Operators (Second Edition)
「XML Schema Part 2: Datatypes Second Edition」と「XQuery 1.0 and XPath 2.0 Data Model (XDM) (Second Edition)」で定義されるデータ型のコンストラクタ関数、演算子や関数を定義した規格。

W3CのXHTML関連仕様が第2版へ

HTMLをXMLの構文で表現し、XMLアプリケーションでも扱えるようにしたXHTMLの関連規格も第2版が2010年7月29日と11月23日にW3C勧告となった。

■ XHTMLTM Modularization 1.1 - Second Edition(2010年7月29日)
XHTMLの拡張/サブセット化を行えるように、XHTMLをモジュール化した仕様で、2008年10月8日にW3C勧告となった「XHTML Modularization 1.1」の改訂版。

■ XHTMLTM 1.1 - Module-based XHTML - Second Edition(2010年11月23日)
「XHTMLTM Modularization 1.1 - Second Edition」で定義されたモジュールのフレームワークとモジュールをベースにしてXHTMLを定義した規格。

■ XHTML-Print - Second Edition(2010年11月23日)
「XHTMLTM Modularization 1.1 - Second Edition」のモジュール化で定義されたXHTMLのファミリー規格の一つであり、携帯端末から低コストのプリンターに印刷を行う場合など印刷用のバッファーなどの性能が限られ、縦方向の紙面を上から下/左から右に印刷するような環境や、さらには、特定のプリンター用ドライバーをインストールできないような環境で、出力したときに若干の見栄えが異なっても許容されるような印刷を行うための規格。

■ XHTMLTM Basic 1.1 - Second Edition(2010年11月23日)
携帯電話やPDAなど、フルセットのXHTMLをサポートできないWebクライアントのために、XHTMLに必要な最小セットのモジュールを含み、イメージ、フォーム、基本的な表、オブジェクトのサポートを含む規格。

XMLのバイナリ表現がW3C勧告となる

テキスト形式のXMLをバイナリで表現し、データ交換を行うための規格がW3C勧告となっている。

■ Efficient XML Interchange (EXI) Format 1.0(2011年3月10日)
いわゆる"バイナリXML"は、2003年に「XML Binary Characterization (XBC)」ワーキンググループ(2005年前半に活動終了)が行った調査・検討を踏まえ、2005年後半に設立された「Efficient XML Interchange (EXI)」が規格開発を行ってきたものである。XMLのバイナリ表現によって、テキストによってサイズが大きくなるXMLデータのサイズを小さくし、データ交換を軽くすることができる。

まとめ

W3CやOASISでのXML関連規格は、IT業界に大きな影響を与えるものが少なくなり、やや「小振り」になってきた印象がある。

XQueryはデータベースでの活用が期待されつつも、2007年の最初のW3C勧告以来、思ったような広がりを見せていない。XHTMLもHTMLからの移行が進むのではなく、HTML5の新しい動きに隠れてしまっている。また、XMLのバイナリ表現についても、電子書籍やワープロソフトなどでXMLをZIP化するものが普及しているなど、別の方向での問題解決が見られる。

とは言っても、XMLという革新的な技術は、そもそも次から次へと出てくるようなものではなく、標準仕様は、様々なニーズに応えるための種々の地道な活動によって支えられることも事実である。最後にどれが残るかは予測が難しい。生き残った技術が必ずしも、技術的に優れているということでもなく、タイミングなどの問題もあるからである。

いずれにしても、IT製品間の相互運用性の向上のための標準仕様策定は必要なものであり、多数のアイデアが出ることによって、より良い解決策が見出されることにもつながる。標準仕様の動きには今後も注目してゆきたい。



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