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タンザニア滞在記

2011年10月01日作成 

安部 みのぶ

タンザニアはアフリカ中央部東海岸、ケニアの下側に位置する、日本の約3倍の国土と日本の3分の1の人口、ンゴロンゴロやセルース、キリマンジャロといったたくさんの国立公園を有する自然が豊かな国である。タンザナイトという青紫色の宝石の産地でもある。

タンザニアについての予備知識がほとんどないまま、ダルエスサラームの蒸し暑い空港に降り立った昨年4月、季節は雨期、ねっとりとまとわりつく重たい暑さと高い湿度が印象的で東京の夏のようだった。アフリカというイメージにたがわず、肌の黒い人ばかりで、みんな頭に荷物を載せて運んでいる。埃っぽい街の穴だらけの道路にはおんぼろ超満員バスがたくさん行きかい、くずれかけたブロック塀の向こう側にこれもまた破れかぶれのTシャツやらカラフルな布がはためき、信号で車が止まると、カラフルな大きなバケツにペットボトル入りの水を入れて頭の上にのせた水売りや、カシューナッツ売りや、ステッカー売りや、なんだかんだがうわーっと寄ってきてとってもにぎやか。

太陽の暑さと人々の暑さに圧倒されそうな、そんな異次元なアフリカの事情を少し知っていただければと思う。


 ザンジバル島の美しい海


食べ物事情

日本へ一時帰国したとき、「いったい何を食べてそんなに太ったの……?」と聞かれてしまった私の太る原因は、“チップスマヤイ”と“ムシカキ”。チップスマヤイというのは、小さめの専用フライパンに山盛りのフライドポテトとたまご2個を入れてオムレツ状に焼き固めた、非常におなかがいっぱいになる庶民的な食べ物である。シンプルに塩で食べるもよし、トマトソースと生の唐辛子を刻んだもので食べるもよし、常におなかがすいているジャンクフード好きにはたまらなくおいしく感じるのである。ムシカキは串焼きという意味で、1口サイズの牛肉を串刺しにしてバーベキューしたもので、これはタンザニアで豊富に採れるライムと塩を付けて食べるのがおいしいと私は思う。

その他の一般的なタンザニア料理は、ご飯と“ムチュジ”というトマト系のスープ、ホウレンソウのソテーと赤い豆の煮たものがセットになった“ワリニャマ”か、ご飯の代わりにトウモロコシの粉を挽いて練って団子状にした手でたべる“ウガリ”がある。トマト系のスープに浮かべるものは肉か魚かを選ぶことができる。


 ワリニャマ

日本ではほとんど見かけない青い固い皮のバナナは、火を通すとほくほくとしたジャガイモのような味になる。以上がランチメニューである。朝は砂糖たっぷりのミルクティー「チャイ」と、これまた油をたっぷり使った小麦粉の薄焼きパン「チャパティ」を食べる人の姿をよく見かける。おやつにはビン入りのソーダ類か白っぽいトウモロコシをバーベキューコンロでグリルしたものがおすすめ。ちなみにタンザニアのコカコーラは日本のコーラよりもすっきりとした後味で、ファンタオレンジはとっても鮮やかなオレンジ色である。

他にもサトウキビの皮をむいたものをしゃぶったり、道端でやかんで入れたエスプレッソや、ココナッツを大きなナイフでカットしてもらって直接飲んでもいとよし。フルーツは、タンザニアの思考がストップしてしまうような灼熱の夏を乗り切るのに欠かせない。マンゴー、パイナップル、パッションフルーツ、バナナ、パパイヤ、カスタードアップルなどなど市場へ行くと日本の10分の1ほどの値段で手に入れることができる。

 

交通事情

シティ・バスという名の路線バス、通称“ダラダラ”が充実しており、たいていの場所に格安で行くことができる。基本1回300シリング=15円。ほとんどが日本の中古(廃車?)バスで“幼児専用バス”とか“絶景大露天風呂”とか“動くスーパーマーケット”とか“府中駅行き”とか、はたまたどこかから引用してきたらしい“ハンドルの使い方”とか引用したつもりがまったく意味をなさない小学生のいたずらのようになってしまったサインなどもあり、いろいろと楽しませてくれる。

ダラダラに乗り込み、アフリカ人の体重を支え続けてぼろぼろになった心もとないぐらぐらな椅子に腰かけると皆の視線が痛い。外国人は特に肌の色が白い(比較的)ので目立つのである。降りたいバス停が近づき「シュシャ!」と大声で叫ぼうものなら、「おおお、この外人スワヒリ語をしゃべったぞ~!うはははは。」とよく分からないひと騒動が起こってしまう。一言しかしゃべってないだろう……と思うのだが、常にそういうノリなのである。“コンダ”と呼ばれる制服をもうこれ以上だらしなくは着られないという風に着こなした車掌は、運賃を集めたりおつりを計算したり、次のバス停の名前をシャウトしたり、奥に詰めるようにせかしたり忙しい。路線図も時刻表もないが、バスの外側にペイントされた帯の色と前後に書かれた始点と終点の名前でどのバスに飛び乗ればよいかがすぐにわかる仕組みになっている。ただし、ラッシュの時間などは近道をするため勝手にルートが変わることもあるので乗る前に一応自分が行きたい場所で止まるかどうかを確かめた方が良い。


 ダラダラと水売り

安さよりも早さと簡単さを取るならば、インドから来た3輪でドアのない“バジャジ”が便利である。乗る前に行先を告げ、値段交渉をして乗る。ドアがないので頬にあたる風が気持ち良く、未舗装とんでも凸凹&人いきれがムンムンする裏道などを通るとアフリカ感がマックスなのである。

ただし、もともとインフラがあまり整備されていないところへ大量の車とダラダラとバジャジが押し寄せるものだから歩行者にとっては危険極まりない。泥酔運転は禁止されているが飲酒運転は問題ないし、ダルエスサラーム北部にある合計3 車線のバガモヨロードに至っては、真ん中の車線はどちら向きに走ってもよいという無秩序ぶりである。その真ん中の車線を使ってダラダラを追い越そうとするとどういうことになるかはご想像にお任せする。


電気事情

東日本大震災の影響で日本全国切実節電モードになり、現代の生活がいかに電気に依存しているか考えさせられたが、タンザニアではそもそも電気が必需品であるという感覚があまりない。各家庭の電気メーターはプリペイド式で、コンビニでお金を払ってもらったシリアル番号を打ち込むと「100ワット」といった数字か表示されてその分だけ電気が使えるというもの。最近では携帯電話の送金機能を使って電気を家にいながら買えるという便利なサービスもある。妙に合理的で感心してしまうのだが、せっかく買った電気も、電気が送られてこなければ意味がない。というのも、国営電気会社タネスコはしょっちゅう計画停電という名の無計画停電を実施するのである。水力発電なんだけど、雨がふらないからダムの水が少なくて電気作れませんので電気送れませんというにっちもさっちもいかない状況である。

しかし、いくら説明したり文句をいったりしてみたところでなんの解決にもならないので、キャンドルを備蓄する、パソコンの電池を備蓄する、冷蔵庫があまり意味をなさないのでちまちま買い物をする、手で洗濯する、電気のあるうちにポンプで水をくみ上げておくというようになんとかしのぐのである。大きなスーパーや会社、お金のある方々のお宅ではジェネレーターというものが大活躍しているが、ジェネレーターを動かすためのガソリンも最近高騰中、かつ品薄状態。こられの複雑かつ道理の通らないどうしようもない状態を称して TIA(This Is Africa)と呼ぶのである。


ようこそ、アフリカへ!



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