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日本語の重箱の隅(辞書編)

2008年04月01日作成 

中村園子

意味がよくわからなかったり、使い方に自信のない言葉は、辞書をひいて調べてみるのが一番確実ですね。今では昔ながらの書籍でも、電子版でも、インターネット上で利用できるサービスでも、調べることができます。今回は、辞書についていくつかの点に注目してみたいと思います。

新しい言葉

いわゆる「現代語」の中にも、一時的な流行で消えていってしまうものと、時が経っても定着して使われるものがあります。定着する言葉の中にも、使い始めた世代だけが歳をとっても使い続ける言葉、いつの時代も若者だけが使う言葉、世代にかかわらず定着する言葉、とさまざまです。辞書に載せられるのは定着度の高いものですが、どれだけ定着するかは時間がたってみないと分からないため、当然ですが使われ始めてすぐの言葉は辞書には載りません。

今年 1 月に「広辞苑」第六版が出ましたが、新しく収録された現代語には「逆切れ:それまで叱られたり注意を受けたりしていた人が、逆に怒り出すこと」、「さくっと:①食物の歯ごたえや切れ方が、軽く小気味よいさま。②ものごとが気持ちよく、あっさり片付くさま」、「うざい:わずらわしい。うっとうしい。気持ちが悪い」、「たられば:『・・・したら』『・・・すれば』の末尾を重ねて、実現しなかったことを仮定する話であることをいう俗語」などがありました。もう新しい感じはあまりしないかもしれませんが、辞書に載せられるほど市民権を得たということのようですね。

いくつかの意味がある言葉

いくつかの意味や使い方がある言葉の場合、辞書によってその順番が違うことがあります。辞書によって、古い、本来の意味に近いものから順に解説するものもあれば、現在の主な使われ方を一番最初に載せるものがあります。どのような順序で意味を説明しているかは、大抵の場合、凡例のページに書かれているので確認できます。

たとえば、「ぜんぜん」の意味を調べてみると、「広辞苑」(第六版、岩波書店)では

  • ①すべての点で。すっかり。
  • ②(下に打消の言い方や否定的意味の語を伴って)全く。まるで。
  • ③(俗な用法で、肯定的にも使う)全く。非常に。

となっています。元の意味に近いものを先に載せているのですが、特に否定に限らない使い方だったというのは意外な発見かもしれません。一方、「大辞林」(第二版、三省堂)では

  • ①(打ち消し、または「だめ」のような否定的な語を下に伴って)一つ残らず。あらゆる点で。まるきり。全く。
  • ②あますところなく。ことごとく。全く。
  • ③〔話し言葉での俗な言い方〕非常に。とても。

という順で、今の使い方で一般的なものが真っ先に載せられています。

辞書には他にも、語数の多さや用例の多さ、説明の詳しさなど、それぞれに特色があるので注目してみるのもよいかもしれません。

辞書を「読む」

「読む」といっても普通の本のように読むということではありませんが、何かを調べたときに「寄り道」してみるのも面白いものです。日本語には同音異義語が多いので、目当ての言葉の前後を見てみるだけでも発見があったり、語彙を増やせたりできるかもしれません。また、普段は意味を考えないような言葉が辞書ではどのように説明されているか、読んでみると考えさせられることがあります。

学生のころのように辞書で調べ物をする機会はあまりないかもしれませんが、普段使っている日本語だけに、基本に立ち戻って調べてみるのはいかがでしょうか。





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