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中村園子
「日本語力」の例としてよく挙げられるのが漢字の使い方。キーを押すだけで簡単に変換できてしまうため、あまり意識しないかもしれません。今回は、あらためて漢字の使い方に注目してみたいと思います。
「漢字が使えない」=「漢字が書けない」というイメージですが、それは手書きの場合の話。手書きではなかなか書けない漢字でも、今は入力して変換すればかなり難しい字でも使えるようになっています。そのためか、むしろ漢字を使いすぎてしまうこともあるようです。
日本語は漢字と仮名文字(ときには数字やローマ字も) が適度に混ざっていることで、語の役割や区切りがわかりやすく、分かち書き(語句の区切りごとにスペースを入れる表記方法) をしなくても自然に読むことができます。このとき、漢字で書かれた部分はリズムでいえば「強拍」のようなもので、その言葉が文の中で目立ちます。それで、やたらと何でも漢字になっていると、とても堅苦しい、あるいはうるさい印象になってしまうのです。
まず、「こと」「とき」「ところ」などの形式名詞はひらがなで書くのが基本的によいとされています。形式名詞とは、辞書によると、「そんなことをするわけがない」の「わけ」のように、実質的な意味を失って、形式的に用いられる名詞。「こと・もの・ため・とき」など。上に修飾句の付くのがふつう。(日本語大辞典、講談社)、というものです。たとえば、次のような場合があります(例1)。
例1)
「確認しました所、・・・」
→「確認しましたところ、・・・」
「聞いた事があります」
→「聞いたことがあります」
「その為、・・・」
→「そのため、・・・」
「先日お会いした時」
→「先日お会いしたとき」
このようにすると、だいぶすっきりと読めるのではないでしょうか。
上で取り上げた種類のもの以外にも、漢字よりひらがながよい場合があります。いくつか例を挙げてみます(例2)。特に、文の主な要素にはならない接続詞や副詞について、ひらがなが好まれることが多くなっています。
例2)
「お忘れのない様、」
→「お忘れのないよう、」
「~と言う問題がありました」
→「~という問題がありま した」
「尚、」 →「なお、」
「直ぐにお送りします」
→「すぐにお送りします」
「是非お越しください」
→「ぜひお越しください」
「有難う御座いました」
→「ありがとうございました」
さらに、「~いただく」や「~ください」、「~いたします」など、メインの動詞に付いて使う表現もあります。こうした言い回しはメールなどでも頻繁に使うので、気になっている人も多いのではないでしょうか。これも基本的にはひらがなで書くものですが、かっちりした感じを好んで漢字をあえて使うこともあり、それはそれで問題ないと思います。「よろしくお願いいたします」と「宜しくお願い致します」では、好みの問題になるかもしれませんが、印象は違ってきます。書く人や場面によって使い分けることも必要かもしれません。
何気なく変換して使っている漢字ですが、今度メールを送るとき、いま一度読み直して考えてみるのはいかがでしょうか?