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ミーハーシンドローム 闘病日記 ~iPad編

2011年10月01日作成   1page  2page  3page 


アプリ視点から見たiPad


次にアプリ視点からiPadを見てみよう。まずはアプリを提供している枠組みであるApp Storeに言及したい。

ご存知のことと思うが,Jeil Breakしない限り,iPad上で動作する公式アプリは,全てApp Storeからダウンロードしなければならないため,その使用法に習熟する必要がある。

しかし,iPadを使用しているユーザの多くはiPhoneも同時に使用している傾向が強いのではないだろうか。実際筆者もそうである。それで,ユーザとしてApp Storeからのアプリのダウンロード/課金/インストールの流れに戸惑うことは少ないだろう。UIもこなれた物が増えてきており,アプリ使用までの一連の画面遷移もスムーズでストレスを感じる事はほとんどない。時々,iPhone側でインストールしたアプリがiPad側にも表示されて削除しなければならないこともあるが,それ以外はiTunesの不整合に悩まされることもないと思う。

かたや,アプリを提供する開発側として,このAppleまたはApp Storeのスタンスに対して一家言あるという人も多いかも知れない。実際,iPadを導入し始めた当初は,弊社も含めて開発ベンダ側が不慣れだった事もあり,アプリの申請手順や審査過程が不透明であることや,時間が掛かり過ぎることなどへの疑問が散見された。

現在は審査期間もずいぶん短縮されたように思われるし,そのプロセスに慣れたベンダが増えてきたように思う。それに代わって,定期購読型のビジネスモデルを持つアプリが突然リジェクトされたり,アプリの代金に対してApple社のチャージが大きすぎるように感じられることに対する違和感が台頭してきたというところだろうか。

そもそもApp Storeを介さなければアプリをインストールすることができないことに対して閉鎖感を感じる向きもあることだろう。

この点に関しては,この記事を通じて何を言おうとも蛙鳴蝉噪なのはわかっている。

ただ,私見を述べさせて頂けば,私はこのような閉鎖的な考え方自体が間違っているとは思わない。このスタンスによってApp Storeで流通するアプリが,健全で一定の品質の担保されたものになっているメリットも多いと思うからだ。

実際,Androidアプリにウイルスが混入したニュースも報道されており,そのオープンなスタンスが逆に足を引っ張ることもある。ちょっとかっこ良く大袈裟に言うなら,自由は時に無秩序に至る事があるということだろうか。App Storeがいわば城壁のような役目を果たし,ユーザの利便性を守っているという見方もあって然るべきと思うのである。

……少し話題が重たくなってきたので,次に移ろう。

App Storeの枠組みはさておき,その上で流通しているアプリはどうなのよ?という話である。この視点では,電子書籍のカテゴリに触れない訳にはいかないだろう。実際,当初のiPadのキラーコンテンツとして語られていたのは電子書籍ビューワとしての位置づけであった。

この点,現時点で「大成功」の評価はまだ遠いところにあると,言わざるをえない。かつて何度か機運の高まったことのある電子書籍シンドロームがそうであったように,少なくとも日本では今回も期待倒れの様相を呈し始めている。標準規格としてepubにある程度の注目が集まっているものの,完全に市場を確立するまでには至っていない。

最初の躓きはiBooksだろう。iPadを手にしたユーザがまずは立ち上げたアプリだと思う。ところがそこに日本語の文庫がない。「しょうがないよな,立ち上がったばかりだから」と思っていたら,驚くことに今でも無いのだ。その隙に乗じて,大手印刷会社と通信キャリアの組み合わせで連合艦隊が乱立し,サービスを競い合っているが,その先行きも決してハッピーなブルーオーシャンには見えない。

結局,日の目を見たのは,いわゆる“自炊”と呼ばれる,所有書物を電子化して持ち歩けるサービスだった。これはこれで便利なものだと思うが,ただPDFにした文書を持ち歩いたところで,電子書籍時代到来と謳われても……というのが正直なところではないだろうか。

しかも,どうやらこのあたりは日本特有の流通文化から変えていかなければならないようで,App Storeと同様,またまたスケールの大きな話となってしまうらしい。何人かの作家が単独でアプリ化したものを流通させているが,単発の取り組みに過ぎず,ユーザがマーケットの中で自由に本を選び,ダウンロードして,自分の好みの環境で閲覧する理想像は,もう少し気長に待つ必要がありそうだ。

それとは逆に,当初はあまり期待されていなかったものの,iPadとの相性の良さが明らかになってきた分野もある。ビジネスシーンでの活用もそのひとつだろう。

当初はこの分野での適用に関して否定的な意見が多かったように記憶している。様々な処理を実施するには性能がチープだとか,入力メソッドが弱い,結局のところPCを持ち出すことになり作業は集約されない,といったところがおおかたの見方だったのではないだろうか。

しかし,この点では良い方に予想が裏切られた。筆者も以前は必ずノートPCを持参していたくちだが,iPadが出てからはその大部分をこれ一台で済ますことが多くなってきている。

必要な資料をクラウドのディスクスペースに格納することにより,いつでも参照できるのは言うに及ばず,iPad購入後すぐに導入したKeynoteに私は驚かされた。スライドのデザイン,テキストや画像の配置,はたまたアニメーションまでiPad単体で設定することができる。果たして作成されたプレゼンシートはとても魅力的なものだった。

実際のプレゼン時にも,スマートな効果を発揮することが多い。特に3人ぐらいの少人数に対しては,手でもって自由に動かしながら見ていただくことができるし,必要であればそのままお渡しして,動かしていただきながら説明を加えることも可能だ。また,Keynoteはアプリ内に画面出力の機能を備えているから,大人数であれば,そのままプロジェクタにつないだプレゼンに移行できるのも,ありがたい。

もちろん,iPadから簡単に印刷できないのは若干のマイナス面だが,ネットとMAC環境さえあればいくらでも解決策を見出すことができるし,なによりも,そんなアプリを1200円(なんと今では円高差益で850円!)で購入できて,アップデートの恩恵も無料で享受できるのは,デメリットを覆って余りある点ではないだろうか。

今回のレビューを書くに当たっては,調子にのってPagesも導入してみた。これまた1200円(なんと今では円高差益で850円!←ちょっと悔しい)で必要十分な文書編集を行うことができ,魅力的なレイアウトを実現することができる。確かに長文入力を単体で済ませようとすればストレスを感じることは事実だが,若干の投資をしてBluetoothのワイヤレスキーボードを購入し,ノートPCの入力環境とほとんど変わらない効率を手にすることができた。

そして,KeynoteにしろPagesにしろ,数秒で編集環境に到達することができ,いつでもアイデアを形にすることができるのは,このデバイスの面目躍如といったところではないだろうか。PCと違い,バックアップを意識することなく,母艦と同期させるだけですべての情報が担保される安心感もぜひ付け加えておきたい。
もちろん,このような使い方をするに当たって,さまざまなクラウドサービスとの連携は必要不可欠であり,その点での理解が必要となる。正直言って,今でも幾つかのクラウド型サービスの連携を考えると,機能が冗長してしまったりして,若干頭がこんがらがることも多いのだが,それでもクラウド3種の神器とも呼べる以下のアプリは何とか使いこなせるようになった。

・GoodReader


GoodReaderは主にPDFを参照するために使用するアプリであるが,対応しているのはPDFだけではなく,MS Officeの各ファイルや画像,HTMLファイルなども参照することができる。

ご存知の通り,iPadでPDFを参照する方法はいくらでもあり,それに関連するアプリも多いし,標準のiBooksアプリでも可能なのだが,その中でもGoodReaderがデファクトスタンダードの位置を占めている。それは痒いところに手が届く使いやすさと,頻繁な機能拡張に依るものだろう。特にSafariやFTPとの連携はとてもスムーズでよく出来ているし,PDFにコメントを追加することもできる。アップデートも頻繁で,その都度使いやすさが改善されていることが感じられるのは,驚くべきことだと思う

・Dropbox(無料)


Dropboxは一言で言うとオンラインストレージである。通常のハードディスクと同じように,文書や写真,動画など,なんでもファイルを格納しておき,必要なときに参照することができる。

格納されているものの情報は自動的に同期が取られるため,PCやWebから同じファイルにアクセスすることが可能だ。PC環境では,あるフォルダをDropboxと同期する特別なフォルダとして設定できるため,そのフォルダに格納したアイテムは,自動的に同期が取られ,その他のデバイスから参照することができる。ファイルマネージャの無いiPadにとって,各種ファイルを保存したり,他のアプリと連携させる上で欠かすことのできないツールだと思う。

・Evernote(無料)


Evernoteは,ノートやアイディア,写真や音声まで,ありとあらゆるモノを記録しておけるアプリである。記録はクラウド上に同期され,PCやWebから同じものにアクセスすることができる。

記録にはタグやキーワードを自由に付与することができるため,カテゴリ分けや検索などを行って有機的な情報ストレージとして活用することができる。

この他にも,容易にリモート環境を構築できるTeamViewerや,RSSビューワのNewsRackなど,iPadの持つハードウェアとしての優位性をより一層引き立たせるアプリを数多く見つけることができる。このようなコミュニティの存在と,それらほとんどのアプリが無料で提供されていることもこのデバイスの持つ魅力の一つだろう。

ちなみに前述のアプリの中には,iPadがなくてもPC環境で使用できるものもある。これからの時代に追従していくためにも,使い方や使い方のさじ加減を自分なりに把握しておきたいところだ。


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