【リレーコラム:XMLの今と未来】 ビジネスにおけるXMLのメリットとは?
2001年09月20日作成
吉田 稔
前回のコラム「ウェブ・サービスはネコ型ロボットの夢を見るか」にあるとおり、「Webサービス」が次世代アーキテクチャとなることがはっきりしてきた。その「Webサービス・アーキテクチャ」の根幹をなす技術はXMLだ。つまり、今XMLに対応しておくことは、次世代のITの備えをしておくことになるのである。
このコラムの読者の中には、顧客や経営陣にXML導入の必要性を説かれる技術者・営業担当者もおられることであろう。あるいはブームにあおられた見境のないXML導入を諌める立場の方もおられるかもしれない。すでに書籍・雑誌でXML導入のビジネス面でのメリットが論じられてきているが、本稿ではそうしたメリットを整理して、上記の方々の参考にしていただきたいと思う。
XMLの導入がビジネスにもたらすメリットとして以下の点を挙げることができる。
■長期的に見た場合に費用の削減になる
XMLはデータ構造の違いに柔軟に対応できるため、企業間データ交換にXMLを採用すればデータフォーマットの違いを吸収できる。したがって既存の基幹システムを温存したまま、企業間のインターフェイスのところだけをXML対応にすれば、企業・団体の壁を越えたシステム連携が可能になる。こうして新規開発コストを削減できる。また、やり取りされるデータフォーマットが変更になる場合、XMLデータならばシステム変更が少なくて済むので、保守コストを抑えられる。さらにXMLとXML関連技術のほとんどは、W3C(World Wide Web Consortium)などの中立的な機関によって標準化されたオープンな規格だ。そのため、異なるプラットフォームへの移行を他の場合よりも少ない工数で行える。当然、XML導入にあたって初期コストはかかるのだが、長期的に見るとトータルコストの削減になる。
■業務効率をアップできる
XMLは、システムがデータの意味を理解して処理できる形式だ。したがって、たとえば電子商取引(Electronic Commerce:以下、EC。)の場合、システムは、発注データの受信から製品の出荷処理までを人手を介することなく自動的に処理できる。これは業務の効率向上になる。
■企業データの付加価値を高められる
XMLでデータを記述すると、データの内容の意味を示すタグがついているので、タグをたよりに検索ができる。こうして検索速度と効率を向上させることができる。顧客情報や売上情報や業務ノウハウなどの膨大な企業データをXML形式で保管すれば、効率的にアクセス・活用できるようになり、それらのデータを企業の有用な資産にできる。
■ビジネスチャンスを広げられる
ebXML(XMLを使ったECのための仕様)などの電子商取引の標準化が進むと、企業間のECはEDI(Electronic Data Interchange。企業間のデータ交換システム)で結ばれたグループ企業間の閉じた世界から、インターネットで結ばれた世界中の任意の企業と取引するオープンな世界へと変容してゆく。今からXML対応の備えができている企業は、他に先駆けてビジネスチャンスを獲得する見込みがある。
企業・団体の業務の中で上記のメリットを生かせる領域があれば、XML導入を考慮できるだろう。ただし、有償・無償のXML関連ツールが数多く出回っている。XML導入にあたってすべてを新規開発する代わりに、それらのツール活用を検討するのは賢明だ。またXMLデータはデータ交換する相手と共通のタグセットを使用するところに意味がある。したがって、まず業界標準となるタグセットは何かを十分検討すべきだ。
XMLとXML関連技術がビジネスで広く利用されるとき、そのインパクトは我々の予想をはるかに越えるものとなるだろう。今、IT不況が世界経済に影を投げかけている。XMLがそれを払いのけるきっかけになることを願いたいものである。