ホーム  > X-plus >  XML活用事例

この記事を印刷する この記事を送る はてなブックマークに追加する
テキストリンクコードを取得する

ブログとRSSの可能性

2005年08月01日作成   1page  2page 

ブログはここ数年で爆発的に広がったコミュニケーションの形態である。人気のあるブログには、著名な会社社長や女優のブログもある。ブログで商品を紹介したり、関連する情報のバナーを置いたりして、広告媒体となっているブログもある。携帯電話からアクセスできるブログはモブログとも呼ばれている。一方、ブログとともに名前を聞くようになった言葉に RSS がある。RSS は最新の更新情報を手軽に提供するための技術である。Web ページに「RSS」や「RDF」というロゴがついていることもある。RSS リーダーも普及してきている。この特集では、インターネットの世界で急速に普及したブログと、サイトのメタ情報である RSS について考察し、今後の可能性について考える。

第一部 -ブログとその可能性

総務省が 2005 年 5 月 17 日に公表した「ブログ・SNS の現状分析及び将来予測」という資料によれば、2005 年 3月末における国内のブログ利用者は延べ約 335 万人、そのうち複数のブログサービスを利用している人を除いた個別の利用者数は約 165 万人と推計されている。さらに、ブログ利用者のうち、少なくとも月に一度はブログを更新している「アクティブブログ利用者」は約 95 万人である。これはインターネット利用人口の 2.1% に相当する。一方、ブログの閲覧者つまり少なくとも月に一度はブログを閲覧していると考えられるインターネット利用者は約1,651 万人である。これはインターネット利用者の 20.6%にも達する。
ブログがここ 1、2 年で急速に普及したことを考えると、こうした数字は驚異的である。そこで本稿では、改めてブログとは何か、ブログの特徴や将来性はどこにあるか、ブログの次に来る技術は何か、という点を考えてみたい。

1. ブログとは何か

ブログ(Blog)は元々「ウェブログ(Weblog)」から来ている。文字どおり、「ウェブ」の「ログ(log)」つまり「記録」のことである。日本においては、個人の「日記」を公開するという用途が多いが、必ずしも日記を付けることを意図したシステムではない。ブログの発祥地であるアメリカやヨーロッパにおいては、日記というよりも、個人のニュースサイトとしての利用が多いという話も聞く。したがって、「ブログ = ウェブ上に公開された個人の日記」という図式は正確ではない。
ブログとは本質的に、「カテゴリに分類された記述のまとまり(記事 = ログ)を時系列に並べて表示する Web ページ」のことである。ブログは一般に、CGI を使ってデータベースから自動的に Web ページを作成する。なぜブログが日本において「日記」となったかについては、社会的・文化的な側面からの回答が必要だろうが、少なくとも技術的な側面からの回答の一つは、ここに述べたように、ブログが時系列で「ログ」を並べるからである。
ブログはアメリカの Six Apart Ltd. が開発した Movable Type が元祖であると言われている。9.11 のテロ以降、アメリカで、友人や知人の安否を知るために利用され始めたことで流行したそうである。ブログの普及には、大手プロバイダーやポ ー タ ル サ イ ト が、 無 料 で ブ ロ グ を 使 えるようにしたことが大きく貢献している。2005 年 5 月現在、一般ユーザ向けにブログサービスを提供している事業者は少なくとも 115 社ある。ブログサービス事業者は、次のタイプに分類できる。

  • ■ プロバイダー系事業者
  • ■ ポータル・EC 系事業者
  • ■ その他の周辺サービス事業者(ホスティング・広告など)
  • ■ ブログ専業の事業者

大半のブログサービスは無料なので、ブログ自体から収益を上げることは難しい。したがって、多くの事業者にとってブログは集客を目的としたサービスである。その意味において、ポータル・EC サイトを運営したり、その他の周辺サービスを提供したりする事業者には、ブログ利用者や閲覧者の存在は魅力的であろう。

ブログが浸透し、今後は写真付きブログなどの利用者が増えることを考慮し、ブログサービス事業者の中には、有料で付加サービスを提供するところも出てきた。たとえば、ポータル事業者のgooは「使って納得!一歩先行くgooブログアドバンス」というキャッチコピーで、月額 290 円(税込)の「gooアドバンスパッケージ」を提供している。このパッケージには、(1)1T(1024GB)の画像容量、(2)デザイン編集機能の強化、(3) アクセス解析機能、(4) データバックアップ機能、(5) アフェリエイトリンクの許可の機能やサービスが含まれている。さらに補足すると、現時点で「gooアドバンスパッケージ」には、ブログの追加機能以外に、gooメールアドバンス(2GB の容量とウィルス駆除)、gooブロードバンドナビ(毎月、厳選動画 10 本見放題)などのサービスも入っている。(http://blog.goo.ne.jp/info/advance/ を参照)

2. ブログの基本的な仕組み

ブログの利用形態は様々であるにせよ、その基本的な仕組みは同一である。そして、こうした技術的な側面は、ブログのあり方を規定している。一般に、ブログのシステムは CGI として存在する。著名なブログシステムである MovableType も CGI である。したがって、プロバイダー等からホームページのスペースを借りて独自でブログシステムを構築しようとする場合は、そのプロバイダー等が CGI の使用を許可している必要がある。

それでは MovableType を例にとってブログシステムの仕組みを考察してみよう。MovableType は CGI スクリプトと Perl を利用している。実際のデータはデータベースに格納されており、要求にしたがって Web ページを生成する。ブログシステムの基本的な仕組みは図 1 のようになる。


図1:ブログシステムの基本的な仕組み

Web ページのレイアウトや構成は、「テンプレート」によって定義する。「テンプレート」をカストマイズすれば、好みの構成やレイアウトにできる。MovableType では、ブログの内容が表示される、ブログタイトルと記事エントリの部分と、カレンダーや検索ボックスなどの「サイドバー」がある。標準的な MovableType では、メインページの左側がエントリ部分、右側がサイドバーになっているが、「テンプレート」をカストマイズすれば、左右を逆にしたり、3つの欄を持つ構成にしたりできる(図 2 を参照)。


図2:ブログ画面の基本構成

「テンプレート」の修正は、HTML の知識があれば基本的に大丈夫である。それにテンプレートに登場する変数名がMovableType でどのような意味を持っているかを知っていれば十分である。ブログの中には、文字や背景、また画像を駆使して「クールな」デザインを実現しているものがある。このように文字修飾や背景の変更などを行うには、「スタイルシート」である CSS を変更する必要がある。MovableType の場合、スタイルシートを変更するには、ブログ管理画面から「テンプレート」に進み、テンプレート画面で「スタイルシート」を指定する。

「スタイルシート」の修正には、HTML と CSS の知識が必要である。CSS は HTML とは独立しているので、CSS 側は HTML のタグ名を「セレクタ」で指定して参照する。または HTML 側で「クラス」や「ID」を指定し、CSS 側の「セレクタ」でそれを参照する方法もある。

例:  h2 { color: gold }

この CSS の指定はテンプレートの <h2> タグの文字色を「金」にする。

それでは、ブログに表示する内容はどのように制御されるのだろうか。MovableType では、ウェブログの「設定」画面で各種の指定を行うことができる。たとえば、ブログのトップページに掲載する記事は「何日間」表示するか、また表示する順番は「新しいものが上」にするか、「古いものが上」にするかを指定できる。「何日間」表示するかの妥当な日数は、ユーザの更新頻度によって変わるだろう。デフォルトは「7日間」になっている。期限を過ぎたものは「アーカイブ」に移る。また一般的に表示順は「新しいものが上」だろうし、それがデフォルトである。

このように技術面から見ると、ブログは Web ベースの汎用的なシステムでありながら、HTML の機能を生かしてユーザごとにカストマイズできるようになっているという特徴があり、それゆえに普及したといえる。

自分でブログシステムを構築するのではなく、ブログサービスを提供している事業者の機能を使う場合は、使用できるテンプレートがいくつも提供されていたり、写真の投稿機能があったりするが、同時にユーザが変更できる範囲を制限していることもあるかもしれない。しかし、ブログのテンプレートに script タグを入れたりして悪意のあるWeb ページを作成しようとする人もいるかもしれないことを考えると、セキュリティ上、制約があってもやむをえないと考えるべきだろう。

3. ブログの特徴

ブログの持つ特徴の中で、ここで注目したいのは「トラックバック機能」と「RSS 対応機能」である。あるブログAにエントリ X があったとする。たとえば、「神戸牛」に関するブログで、「しゃぶしゃぶの味」に関する記事があったとする。この記事について、他の人が自分の意見を述べたい場合は、基本的に 2 つの方法がある(図3 を参照)。


図3:コメントとトラックバック

1 つはコメントを書くことである。ブログ A の記事 X のページにあるコメント欄に、必要な項目を記述して投稿する。そうすると、このコメントはブログ A に保存される。コメント機能だけを見れば、ブログは機能面で従来の「掲示板」機能と大差ない。

もう 1 つは、自分のブログ B の記事 Y の中で、その「しゃぶしゃぶの味」についての意見を述べるという方法である。そして、自分の記事Yを自分のブログ B に投稿する段階で、ブログ A の記事 X を参照していることを URI で明示的に指定するのである。そうすると、記事 Y 自体はブログ B に保存されているが、ブログ B からブログ A に対して、記事 Yは記事 X を参照しているという通知が送られる。これにより、ブログ A は記事 X を参照した記事が、ブログ B の記事Y にあることを知り、記事 X を表示するときにこうした参照情報があることを追加して表示できる。こうした機能を「トラックバック」という。

自分がどこを参照しているかは自分の持っているリンク情報からすぐに分かる。しかし、自分がどこから参照されているかという情報は、入手が簡単なようで実は難しい情報である。いわゆる逆リンク情報である。

たとえば、ブログや日記の世界から離れて、リンクや相互参照が多くあるマニュアルの内容を更新することを考えてみよう。ある箇所の修正が他の部分にどのように影響を与えるのか、またある部分の内容を修正すると他のどの部分を見直す必要があるかは容易には判別できない。自分がどこを参照しているかのリンク情報はあっても、自分がどこから参照されているかの情報はないからである。

こうした意味において、「トラックバック」機能を実現したブログは、リンク機能の発展を示唆するモデルとなる可能性を秘めている。なお、ブログでトラックバック機能を使うには、関係するブログでトラックバック機能が適切に設定されていなければならない。

もう 1 つ注目できるのは、RSS 対応機能である。RSS とはブログの更新情報を公開するデータであり、XML で記述されている。RSS については、第二部で取り上げるので、ここではブログに関する意味合いだけ述べておく。ブログには積極的に更新情報を発信するという特徴がある。ブログの記事を投稿時に ping サイト(ブログの更新情報を受け付けて公開してくれるサイト)へ更新情報を送ることができる。また RSS によって最新の更新情報を公開できる。このような更新情報の発信により、ブログはアクティブなメディアになっている。

4. ブログの可能性と SNS

ブログは個人の日記だけでなく、企業の最新情報(What's New)や FAQ の Web ページなど、時系列に記事を並べて表示したい場合に使われている。ブログの現在の使用形態だけでなく、ブログの基本機能や特徴に立ち戻り、先入観を排除して用途を考えていくなら、さらに利用分野は広がるであろう。

もちろんブログは、テンプレートを HTML で記述するため、HTML という視点から見れば、あらゆる Web ページを記述できるかもしれない。それはブログの特性ではなく、HTML の特性である。したがって、安易に Web ページをブログ化することは慎むべきだろう。むしろブログの特性である、「カテゴリに分類した記事を時系列に並べて表示する」という機能と相性がよいなら、Web ページや Webシステムをブログで構築するのにはメリットがある。システムとしてある程度完成されており、カストマイズで対応できるからである。

さて、2005 年 5 月の総務省の報告によると、ブログよりも利用者が大幅に増えると予測されているサービスがある。それが SNS つまり「ソーシャルネットワーキングサイト」または「ソーシャルネットワーキングサービス」と呼ばれるものである。SNS の代表的なものには、GREE(グリー:http://www.gree.jp/) や mixi(ミクシィ:http://mixi.jp/)がある。

SNS はコミュニティ型の Web サイトである。ブログと同様の機能を持つだけでなく、掲示板やコミュニティ内のメール機能を持っていることもある。しかし、ブログとの決定的な違いは「非匿名性」である。つまり、基本的にSNS には、すでに会員になっている人の紹介がなければ入れないため、事実上「匿名」ではない。もちろん、名前を名乗る必要はないのだが、だれの紹介か、あるいはだれと友人かが分かるようになっているため、「匿名性」が薄められている。

ブログは基本的に「匿名」の世界であり、不特定の人からのアクセスを受け付けている。不特定のユーザとのコミュニケーションツールである。これは同時に、記事やコメントの中に誹謗中傷などの入り込む余地があることも意味している。その点で SNS は誹謗中傷などの生じる可能性は少ない。

SNS の利用人口は、2005 年 3 月末時点で、延べ約 111万人、複数の SNS への掛け持ちを除いた純参加者は約 105万人と推計されている。SNS 参加者のうち、少なくとも月に一度は SNS を利用するアクティブな参加者は約 80 万人である。

総務省によれば、2007 年 3 月末には、SNS 参加者が延べ約 1,042 万人、アクティブな SNS 参加者が約 751 万人になると予測されている。同時期のブログ利用者が延べ約 782 万人、アクティブなブログ利用者が約 296 万人という予想値と比べると、SNSの普及がこの数年で急速に進むと考えられていることが分かる(図 4 を参照)。


図4:ブログと SNSの利用者の増加予測

SNS が成功した事例としては、熊本県八代市が 2004 年10 月に始めた「ごろっとやっちろ」というサイトがある(http://www.gorotto.com)。自治体の電子コミュニティとして、掲示板に代わって構築された。八代市民が会員の紹介で入会できる。掲示板の機能はあるが、あくまで市民同士のコミュニケーションツールである。

SNS は認知度がまだ低いが、注目すべき Web 技術である。SNS は企業が顧客を囲い込むのに適したツールである。また、これまで「フォーラム」や「掲示板」を利用していた共通の関心事や背景を持つグループが、SNS に移行することも考えられる。そして、もっとも期待できるのが、企業内のグループウェアが SNS へ移行する可能性である。SNSはポータル的な要素を持っているからである。

SNS にせよ、ブログにせよ、Web 上のツールをカストマイズによって構築できる点が共通している。いわば「ソフトウェア」のパッケージを使って、個人やコミュニティを満足させる Web ページを構築できるようになったのである。この点で、Web も新たな段階に入ったといえるかもしれない。また、ブログや SNS は Web を使ってどのようにコミュニケーションを図るかという点でも、メールや掲示板にはないパラダイムを提供している。こうした技術の萌芽が、今後の Web を動かしていく現実的な力となるのかもしれない。

 

 1page  2page 

この記事と関連の高い記事

関連キーワード:RSS


関連キーワード:RSS リーダー


関連キーワード:XML


関連キーワード:goo


関連キーワード:ブログ


関連キーワード:巻頭特集




ページトップへ戻る