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FrameMaker の逆襲

2008年04月01日作成   1page  2page 

営業推進ソリューション担当
マネージャー
天野忍

身の回りの様々な製品が多様化し,取扱説明書をはじめとするマニュアル類はより一層重要なものになりつつある。また,作り手側からすると,流用率が高く多言語展開が求められるマニュアルを効率的に作成することには取り組むべき余地が多い。そのようなニーズを満たすため,2007年11月,Adobe FrameMaker 8がリリースされた。帰ってきたFrameMaker・・・,その概要に迫る。

はじめに

この紙面をご覧になっている皆様の中には,“FrameMaker(以下:FM)”という名前を聞いたことがない方もおられるかもしれないので,最初に製品の概略に触れておくことにする。

FMはいわゆるワードプロセッサと呼ばれるツール群の一角をなす製品である。Microsoft WORDに代表されるこの製品カテゴリにはそれぞれの特長を生かした製品が存在するが,中でもFMはテクニカルドキュメントの世界で多くの事例を持ち普及しているアプリケーションである。

FMの持ついくつかの特徴的な機能がその世界での定着に寄与してきた。一つは長大文書編集時における信頼性である。FMは容易にいくつかの文書ファイルを束ねて管理し,本全体を貫いた目次/索引の作成や相互参照,書式の管理を容易に,そして(これがWORDと比較する時の決定打だが)確実に行うことができる。

また,XMLなどの規格を活用して構造化された文書をあらゆる媒体に再配布する点で様々な筋道を提供していることも,企業に選択される一因であることだろう。レイアウトに対する自由度をある面で限定することにより,それらの必殺技を手に入れたFMは絶対的なシェアこそ持っていないものの,上記の機能をどうしても実現しなくてはならない制作者にとって必須のアプリケーションであった。

弊社でも,構造化文書のソリューションを中心に展開していることからFMへは取り組みを深くしており,データベースを使用したドキュメントシステムの開発やアドビ社と協力の下に標準セミナを開催している。本誌の前身となっているSGML NewsLetterや,フリーペーパーとなる前のDigital Xpressにも幾度となくFMを取り上げた記事を掲載させていただいた。

しかし,ここ数年FMが無くなるのではないかという噂がまことしやかに囁かれてきた。何を隠そうFMファンを自称する筆者も翻弄された口で,一時期はFMに変わる組版エンジンを真剣に考慮していたものだ。しかし,嬉しいことに期待は裏切られた。FrameMaker 8(以下:FM8)の正式リリース,しかもテクニカル文書に向けたスイート化というおまけ付きである。それで,歓迎の意を込めて「FrameMakerの逆襲」と銘打ち,以下に製品紹介の文章を掲載させていただく。

TCスイート

今回からFMは単体だけでなく,スイート製品としてもパッケージが用意され,Adobe Technical Communication Suite(以下:TC)と呼ばれている。この点に関して言えば,これまで文書作成の世界では,「DTP三種の神器」と呼ばれるIllustrator/PhotoShop/InDesignを擁し,華々しい構成の “Creative Suite(以下:CS)”と呼ばれる製品が注目を浴び続けてきた。

もちろん,今回の変更によりTCが一躍表舞台の主役に躍り出ることにはならないだろうが,特定のマニュアル作成ワークフローにおけるFMの製品優位性を感じながら忸怩じくじたる思いを抱いていた私のような人間にとって,コンプレックスから解放され溜飲を下げるものとなった,といったら言い過ぎだろうか。

とにもかくにも,CSがその名の通りデザイン性の強いクリエイティブワークを支えるのに対し,TCは膨大なボリュームのある技術文書を主なターゲットに据えている。それら資産性の高いコンテンツを,紙媒体だけに留まらずオンラインヘルプシステムやeラーニングコンテンツなどのあらゆるインタラクティブな用途に使用するためのオーサリング環境が提供され,作業を強力にサポートしてくれる製品ラインアップが構成されている。TCにパッケージされているのは次に挙げる4つのアプリケーションの最新版である。

●Adobe FrameMaker 8
今回の主役。テクニカルドキュメントのオーサリングとパブリッシング担当
後ほどクローズアップするが, Unicodeのコード体系で生まれ変わることにより,多言語展開時の壁が取り払われている。特に構造化文書をベースにしたデータフローを構築すれば,メタデータの特性を生かし,より柔軟性に富む多言語マニュアルシステムを実現できる。詳しくは後述。

●Adobe RoboHelp 7
アプリケーションや製品のオンラインヘルプシステムとナレッジベースの作成担当
Windowsヘルプ時代によく使用されたツールがマクロメディアを経てアドビに渡り,今回の仲間入りを実現した。
紙媒体に展開される文字や画像のデータがヘルプコンテンツにマルチユースされるだけでなく,TCの利点を生かしCaptivateとFMを連動させることにより,幅広い利用者や言語に向けたヘルプコンテンツを様々な出力フォーマットで再配布することができる。

●Adobe Captivate 3
学習効果を高めるラーニングコンテンツの作成担当
Captivateは,これまでプログラミングや動画/音声ファイルの扱いに関する技能を必要としたラーニングコンテンツ作成を,手軽にできるようにしたツールである。
マウスの動きやクリック時の動作を含むソフトウェアシミュレーションをマクロを記録するようにしてたった一度のオペレーションを元に作成することができ,ヘルプシステムなどと組み合わせることでよりインタラクティブな情報配信に寄与する。
また,表示されるメッセージなどをXMLベースで入出力することができるので多言語展開にも対応している。

●Adobe Acrobat 3D 8
ご存じAcrobatの拡張版。コラボレーションのためのPDF作成担当
CADなどのソフトを使用して作成された3DデータをPDFに変換して保持することができ,よりセキュアで,高度な知識や高額なアプリケーション環境を必要としない,情報共有や共同作業環境を実現することができる。
アドビによるとネイティブCADファイルの150分の1程度までファイルサイズを小さくすることができるという。
このように,TCにはテクニカルドキュメントにまつわる死角のない製品群が名を連ねており,それらを組み合わせて実現される統合環境は魅力である。

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